SAI建築社が提案する
暮らしと住まいの新しいサイクル
と題して毎月お届けしている
フリーペーパー「SAIKURU」
今回は2023年10月に発行した
vol.163号のWEB版です。
ぜひご一読くださいませ。
蔵の再生に
居心地の良さを
CASE.163
佐賀県・小城市
2022.9 完成
現在まで残る「明治蔵」「大正蔵」「昭和蔵」及び「竪型水車」とその水路は国の有形登録文化財。写真は一新した「大正蔵」の2階です。
元々あった地下室を改修し、スパークリング日本酒を保管するためのセラーに。数多の瓶がここで出荷の時を待っています。
蔵の一階部分を改修し、ギャラリースペース、そしてシアタールームとしても活用できる多目的ルームを創出しました。
「不易流行」を胸に
取り組んできた酒づくり
1875年創業。以来、真摯な酒づくりに邁進し、今では全国に、そして世界にも知られるようになった「天山酒造」。その日、酒造を訪ねると、前日からの雨を受け、酒蔵の目の前を流れる祇園川が大きな音を立てていました。奥を見やれば、脈々と連なる山々に雲が掛かり、とても幻想的な光景です。この雄大な自然が育んだ天山山系の伏流水で仕込むのが「天山酒造」の酒づくり。
現在、その陣頭指揮をとるのが、代表取締役であり、六代目蔵元でもある七田謙介さんです。七田さんは先代から受け継いだ「不易流行」の精神を常に心に留めています。「不易流行」を辞書で引くと、「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと」とありました。
この小城の自然がもたらす恵みを最大限に活かした品質本位の酒づくりに変わらず取り組む中で、時代の流れにも寄り添い、失敗を恐れず、チャレンジする。その思いが七田さんの軸になっています。そして、「不易流行」の思いは、酒づくりだけにとどまらず、酒にまつわる、モノ、コトにも伝播していました。
今年の春から段階的に進めていたリニューアル工事が、9月に行われた蔵開きでいったん完了。改修工事に一つの区切りが付きました。今回、SAI建築社ではこのリニューアルをサポートしています。今年で創業から147年目を迎えるにあたり、広い敷地、そして蔵の中に、現在使われていない道具類や眠っているスペースがありました。
これを活用したかったという七田さん。「酒づくりに邁進する一方で、世界に通用するようなスパークリング日本酒の開発にも力を注ぎ、一般社団法人『awa酒協会』の理事を務めるようになりました。その中で、過去、シャンパンの本場・フランスへ現地視察に赴いたことがあります。彼の地にはシャンパンを愛し、育む社会と地域性がありました。この経験から、自分たちの作る日本酒の味わい方にも、もっとできることがあると思えたんです」と振り返ります。
BARルームでは、名尾和紙による壁紙、諸富家具による家具が空間を優雅に演出します。
多目的ルームの頭上には芸術的なステンドグラスが飾られています。
酒樽を加工し、フォトジェニックな撮影スポットを生み出しました。
日本酒を中心にした
居心地の良い空間
蔵の再生において、最も注意を払ったのが、居心地の良さでした。「一方的にこちらが伝えたいことだけを伝えるような、いわゆる資料館みたいな場所にはしたくなかった。驚きがあり、発見があり、感動がある。ゲストが主体的にこの蔵の魅力にずっと触れていたくなるような、そんな場にしたかったんです」と笑顔を見せる七田さん。
この要望を受け、生まれ変わった蔵は、蔵開きの際に人々が集まり、交流することも踏まえ、ゆとりをもった空間づくりがなされています。 まず、動線に引っかからない壁面、頭上の空間使いにおいて、さまざまな工夫を取り入れました。壁面は酒瓶のシルエットが引き立つようなディスプレイを心がけ、頭上の空間においては歴史のある蔵ならではの梁を生かしつつ、時にはステンドグラスを大胆に飾り、空間にメリハリを持たせています。
使われていなかった蔵の2階部分を改装した打ち合わせルームと大きな酒樽を大胆に魅せたショールームは、この生まれ変わった蔵を訪れるゲストたちから早くも好評です。 七田さんが気に入っているのが、一見すると入口がわからない、秘密の小部屋のようなBARルーム。「佐賀のテロワールを感じてもらえるように趣向を凝らしたんですよ」という七田さん。
諸富家具、名尾和紙、李荘窯といったように、家具、壁紙、そして酒器にと、佐賀ゆかりの面々を取り入れ、酒を中心に、佐賀の魅力をトータルで演出。「新たな蔵で、酒、モノ、空間から、楽しみながら文化的な価値を感じてもらえたら嬉しいですね」と七田さんは目尻を下げました。
元々壁一枚で仕切られていた2つの空間にアプローチを製作。奥の多目的ルームと連動した映像演出が可能になりました。
1階のメインスペース。実はこの場所のどこかにBARルームの入口があるんです。どこにあるかは来てからのお楽しみ。
天山酒造の歴史を感じる光景。
佐賀県の自然が大変豊かな小京都・小城(おぎ)の祇園川沿いにある「天山酒造」
Owner's Voice
「蔵のリニューアルを終え、小城の風土を酒とともに感じてもらえる場が整ったように思います。目下、VRシステムによってオンライン上で酒蔵見学ができる工夫も考えています。今後は国内の需要が戻ってくるでしょう。国外のバイヤーに向けてもプレゼンテーションできますので、これからが楽しみです」
天山酒造 代表取締役 七田様より
Shop Producer
リノベーション事業部
部長
友納 宗一
最初に現地に伺った時から終わりまでほぼ1年がかりでした。多目的ルームの立体的なステンドグラス、BARにある古い金庫を再利用したディスプレイ、地下室のワインのキャップを模したテーブル、大正蔵に並んだ木製の大樽など見所が多数あり感動しています。丁寧な仕事をこなしてくれた現場の職人さん達に感謝です。皆様、長期間お疲れさまでした。
今回取材させていただいた
天山酒造 様の写真はホームページの
実例ギャラリーでも紹介してます。
こちらをクリック
「天山酒造」
住所 佐賀県小城市小城町岩蔵1520
TEL 0952-73-3141
最寄り駅 JR小城駅より車で約10分
交通 高速長崎自動車道
佐賀大和インター多久インターより車で15分
天山酒造さんのホームページは
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毎月、二丈・朝倉のモデルハウスや
各地の分譲住宅や本社ショールームにて
配布中です。
配布後、このホームページでも
WEB版として定期的に掲載していく
予定です。ぜひお楽しみに。
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