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#コラム

SAIKURU Vol.170 「100年後を見据えたむかしおやつ。」

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SAI建築社が提案する
暮らしと住まいの新しいサイクル
と題して定期的にお届けしている
WEBマガジン「SAIKURU」

2023年4月よりWEBマガジンとして
リニューアルいたしました。

ぜひご一読下さいませ。

100年後を見据えた
むかしおやつ。

 

Case 170
【福岡市・六本松】2023.3月完成

 

けやき通り沿いの木々が枝いっぱいに緑を抱き、爽やかな表情を見せる春。心地よい春風と、新緑の眩しさに誘われ、ついつい「ちょっとお散歩でも」とアクティブな気分になります。

サイクルのWebマガジン移行後、二本目の本記事は、けやき通りの先にある六本松エリアにオープンしたばかりのニューフェイスです。

「木琴堂(もっきんどう)護国神社前本店」(以下、木琴堂)の開業は2023年3月。場所は店名に記載されているように、「福岡縣護國神社」のすぐそばです。コンセプトは「むかしおやつ」。

日本で古くから親しまれ、そして愛されている「どら焼き」をはじめ、昔ながらのおやつを取り揃えています。

開業からまだ日も経っていませんが、道ゆく人たちが思わず目をとめ、足をとめ、次々に暖簾の向こうへと吸い込まれてゆく人気ぶり。

実はこの店を運営しているのはコンセプトメイキングからグラフィック、空間設計まで手掛けるデザイン会社「Pilot Planning inc.」。なぜデザイン会社がお菓子を? そんな疑問符が頭に浮かんだ状態からの取材でしたが、インタビューを終え、心に残ったのは必然性と納得、そして温かい気持ちでした。

今回は、木琴堂の店舗マネージャーを務めるSさんにお話を伺います。

 

今も未来も愛される
むかしおやつがテーマ

——それにしても「むかしおやつ」って、とても惹かれる表現ですね。

とても嬉しいです。代表の頭の中にはずっと「どら焼き」があったんですよ。昔ながらのお菓子で、老若男女問わず親しまれていて、いつの時代にも愛されている。そんな一過性ではないおやつの店を目指しました。
また、おいしいけど罪悪感があったり、食後にずっしりしたりするおやつだと、今の時代にマッチしませんから、そういうおやつではなく、日々食べられるものを追求しています。


そのため、原材料はとても厳選しています。看板商品のどら焼きについては、あんこには砂糖の代わりに甜菜糖を使い、すっきりとした後味に仕上げました。そして生地には小麦粉のほかに、米粉や全粒粉も織りまぜているんです。こうすることで、もっちりとした食感、小麦粉の風味も豊かな生地になります。また、空気をほどよく含ませることで、ふんわりとした軽やかさも取り入れました。

見た目は結構、大ぶりなんですが、あんこ、生地のバランスの賜物でしょうか、小さなお子様でもぺろりとお召し上がりいただけるどら焼きになっているんですよ。

 

もちろん、どら焼き同様に、ビスコッティ、かりんとうといった他のおやつについても、素材をしっかり吟味し、日々、気持ちよく食べてもらえるような観点から商品を企画しました。

 

——実際にどら焼きを食べてみましたが、本当に大きいのに、スーッと最後まで美味しく食べられるから驚きです。丁寧に作られているのが、よく分かりました。

甘さを極力控えている分、素材の味がストレートに出るんです。素材の味をしっかり感じてもらえるよう、甘さを抑えているとも言えますね。

 

見たことのない感じを
創り出していきたい

 

——販売されている商品が、お店の空気感とも、すごくマッチしています。

メイン商品がどら焼きということで、基本的には和のエッセンスが強めではあるんですが、洋のエッセンスも加えているんです。それはどら焼きの歴史にも関連していて。

どら焼き自体の発祥については諸説あるんですが、今のようにあんこを2枚の生地で挟むようになったのは大正時代なんだそうです。それもあって、空間においては大正時代に存在した洋館にインスピレーションを得ています。
 

 

和菓子の店をそのまま洋館で表現するのはチグハグになってしまいますから、「昔の大工が作った洋館」といった絶妙なニュアンスを取り入れました。

ファサードは和、店内に入ると混在した和洋のハーモニーを感じてもらえるのではないかと思っています。

——ディテールまでしっかり作り込まれていますね。

例えば店内のペンダントライトは京都の職人さんに作っていただいたオリジナルで、その照明がやさしく照らしている商品陳列棚は角の部分がアールになっています。この丸みがレトロな空気感を引き立てるんですよね。

この仕様はなかなかコストが掛かることもあって、弊社がクライアントに提案しても、予算オーバーになって採用されにくいんです。せっかく自社で手掛ける店舗ですから、そこはちょっと気前良く、本当にやりたいことを詰め込んでみようと。そのコーナーに使っている曲面ガラスも特注なんです。

最終的にいわゆる和モダンでもなく、一言で和洋折衷とも表現しにくいような、「見たことのない感じ」を創り出せたのではないかなと思っています。

 

店舗の表には無垢材を取り入れて外の天候、気候による経年変化を想定していますし、足元に埋め込んだ石一つとっても、石材屋へと足を運び、数えきれないほどの石の中から、最も似合いそうなものを選びました。

 

店頭照明にはダウンライトを使わず、光源をお客様から見えない位置に設置した間接照明を採用しています。あくまでさりげなく引き立てる、という狙いです。

また、大正時代を彷彿とさせるこの空間の世界観を崩さないように、通風孔の部分だけを確保してエアコン本体を隠すような配慮もしました。
 

こうやって色々な工夫やアイデアを空間デザインに盛り込めたのは、長年、お仕事をご一緒させてもらっているSAI建築社さんとの関係性ありきですね。弊社で設計した店舗を、SAIさんに形にしてもらうという案件を重ねてきましたから。

SAIさんの大工仕事の確かさ、そして現場での応用力があってこそ、今回の自社店舗も満足できる仕上がりになっています。

 

 

一つひとつを積み重ね
いつかは街の景観に

 

——今後のビジョンは。

まだオープン間もないので、すぐに、というわけではありませんが、厨房もしっかり広さを確保しているので、少しずつ商品を増やしていきたいなと思っています。

近く、最中やアイスキャンディあたりを販売できたら良いですね。
 

また弊社が設計・デザイン会社という点でいうなら、50年後、100年後と続けていく中で、この木琴堂が福岡の街に溶け込み、景観の一部になれば、それは何よりも喜ばしいことだと思っています。そうなるように、一つひとつ大切に取り組んでいきたいですね。

 

木琴堂(もっきんどう)護国神社前本店
電話 092-753-9457
住所 福岡県福岡市中央区六本松3-16-33
   グランドソレイユ護国神社前1F
営業 10:00~18:00
定休 不定休

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House Producer

リノベーション事業部 営業
森田 大貴

パイロットプランニングさんとのお仕事は常に光栄に思っておりますが、今回はパイロットさんご自身が運営されるお店のデザインを担当することになり、特別な緊張感を感じておりました。パイロットさんのアイデアと弊社の施工が見事に融合し、素晴らしい店舗が完成いたしました。本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 

今回取材させていただいた
木琴堂様の写真は
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いつも弊社発行のフリーペーパー「SAIKURU」をご覧いただき誠にありがとうございます。2009年春に創刊した「SAIKURU」2023年の春で丸14年となりました。

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ヌードルライター山田がススメる
今月の一杯

中洲 川端 きりん


新店にして、抜群の安定感

 

醤油、塩、味噌といった、いわゆる“非豚骨”ラーメン。“非豚骨”という言葉自体が全国的に見れば、とてもユニークで、さすが福岡は豚骨ラーメンの聖地だなと思うわけですが、そんな豚骨一辺倒だった福岡において、昨今、非豚骨ラーメンは一昔前と比べて格段に市民権を獲得しています。ただ、そんな流れがあれば、いつの時代もカウンターカルチャー的に対抗勢力が盛り上がるものです。ここ数年の間に実力派の豚骨ラーメンの新店が街を賑わせています。

その一つが、この「中洲 川端 きりん」です。開業は2019年。以来、瞬く間に人気店の仲間入りを果たしました。

看板商品は「豚骨拉麺」。スープは久留米で生まれた「呼び戻し」という手法を取り入れたもので、骨の部位によって炊く時間を変えつつ、徹底的に豚骨からの旨味を文字通り“骨の髄”まで抽出しています。レンゲですくえば甘い豚骨の香りが立ち上り、口に含むとややとろみのある質感に、思わずニンマリ。「出てるな」と思わず呟いてしまいました。大ぶりなチャーシューも嬉しいし、個人的には有明海苔のトッピングが最高に合うのでおすすめです。

ニューカマーにもかかわらず、もはや安定感すらある「きりん」。実は醤油ラーメン、つけ麺も取り揃え、しかもハイクオリティなんです。つまり通うしかない、ということ。ご飯もの、そして肉汁たっぷりな餃子(提供は夜のみ)も見逃せません。

 



【住所】福岡市博多区上川端町9-151
【電話】092-292-6563
【営業】11:00〜21:00
【店休】不定休
【P】なし

※コロナ禍で営業時間、定休日に変更がある場合があります

 


山田祐一郎(KIJI ヌードルライター)

1978年生まれ。2003年よりライターとしてのキャリアをスタート。現在は日本で唯一(本人調べ)のヌードルライターとして、雑誌、ウェブマガジン、書籍などの原稿執筆に携わる。毎日新聞での麺コラムつるつる道をゆく」をはじめ、連載多数。webマガジン「その一杯が食べたくて」は1日最高13,000アクセスを記録したことも。著書「うどんのはなし 福岡」「ヌードルライター秘蔵の一杯 福岡」。2017年スマホアプリ KIJI NOODLE SEARCHをリリース。未知なる麺との出会いを求め、近年では国内のみならず海外にも足を運ぶ。2019年より製麺所を営んでいた父の跡を継ぎ、「山田製麺」の代表に。執筆活動と並行し、製麺にも取り組む。

 

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